■村尾酒造ご紹介
「職人気質と直感 焼酎の達人・村尾寿彦」
市内より車で2時間ほどの川内市(せんだいし)は、かつては薩摩の中心地として栄え国府が置かれていました。川内市の中心を流れる川内川は鹿児島の3大河川に数えられその美しい流れは古くから人々に愛されました。この地を訪れた与謝野晶子は「月光に比すべき川の流るるや薩摩の国の川内郷に」と詠みました。市街から車で20分程の山間の村に、村尾酒造があります。このお蔵の歴史は古く、山の裏手にある名湯・高城温泉に湯治に来た、明治維新の英雄・西郷隆盛さんが立ち寄ったそうです。「川内(せんで)ガラッパ」は、少々のことではへこたれず、愛嬌があって義理堅い川内人のことをいいます。まさに村尾寿彦氏はこの言葉通り!!豪放磊落な笑顔と人に対する心配り、そして小さな焼酎蔵を鹿児島屈指の銘醸に育てたパワーを持つ薩摩男子です。これほど著名なお蔵ですが、人手に頼らず原料の買い付けから、時間があれば配達まですべて村尾さんがやっています。「麹造り」から「蒸留」のチェックまで、たった一人でこなす村尾寿彦さんは、自らを『焼酎の奴隷』と笑い飛ばし、「人に気を遣うなら、焼酎に気を遣いたい。だから一人で仕込むんです。」と語り、8月中旬から年末まで、一日の休みもなく、造り続けます。その姿勢からは、焼酎に対する頑固な「こだわり」が伝わってきます。村尾さんの造りで、最も重要とされる「蒸留」についても、「焼酎造りの4割は蒸留で決まる」とし蒸留機の本体から、パイプの曲がり具合に至るまで自らの手で調整しています。親鳥が雛を育てる様に、その翼の下で焼酎を造る。それが『村尾流』なのです。村尾さんのお話には、「気分」という言葉がしばしば出てきます。一見、職人気質の塊のような村尾さんのこの以外な一面は、彼の焼酎造りのもう一つの「鍵」となる要素ではないでしょうか?焼酎造りは、紛れもない「もの創り」です。 ゼロからスタートしてひとつの完成品―しかも相手は生き物です−とするにですから、マニュアル通りにはいかない沢山の試行錯誤があります。 そこには、「創造性」・「閃き」・「インスピレーション」が要求
されます。この村尾さん曰く、「気分」とは長年の経験から得る勘、そして彼の持つ天分が無意識のうちに現れたものでしょう。自らが目指す酒質を追求する職人気質と、鋭いインスピレーションというエッセンスをちりばめられた村尾寿彦さんのお酒。これが村尾流の焼酎なのです。蒸留からくるこのお蔵ならではの「旨味」・力強さ・口中に広がる柔らかな味わいほのかな余韻を残しつつ鋭くキレる後味。そして、ストレート、オン・ザ・ロック、お湯割、どの飲み方で楽しんでも決してこのお酒のスタイルが崩れません。まさに、飲手にはたまらない「日常酒」なのです。熱狂的なファンが東京にも数多く、その心を捉えて放さないのは、この複雑な魅力にあるにではないでしょうか。
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